成年後見

成年後見制度は、認知症を発症した高齢者や知的障がい者、精神障がい者等を対象に、判断能力が不十分な方の権利擁護、財産保護等を目的として設計された制度です。
個人の自己決定を尊重しつつ、権利擁護を図り、ノーマライゼーションを実現することを制度理念としています。
成年後見制度が目指すところは以下のとおりです。
(1)高齢者や障がい者等の自己決定の下「その人らしい生活」を実現する
(2)基本的人権の尊重
(3)高齢者や障がい者等の自己決定の支援
判断能力の程度により、成年後見人・保佐人・補助人が家庭裁判所から選任され、ご本人の生活面および財産管理面の支援をします。
成年後見人・保佐人・補助人は、現在6割以上が、本人の親族ではない、第三者の専門職が選任されています。法律知識、福祉知識に加え、高度な倫理の保持が求められているからです。
◆成年後見制度の類型
(1)法定後見
法律の規定による後見の制度で、判断能力の程度など本人の事情に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つに区分されます。
後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取消したりすることにより、本人を保護・支援する仕組です。
(2)任意後見
契約による後見の制度であり、自己決定の尊重の理念を最大限に生かすための制度です。
本人(委任者)が十分に判断能力を有しているうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ任意後見人に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結んでおく制度です。
本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督のもと本人を代理して契約などをすることにより、本人の意思に従った適切な保護・支援をすることが可能となる仕組です。

事例紹介(こんな場合はぜひご相談ください)

 

高齢者が健康食品など訪問販売などで次々購入させられている

花子さんは、ご高齢ですが足腰は元気で、毎日庭のお手入れやお稽古事に精を出しています。
ある日娘の良子さんが花子さんを訪ねると、玄関にいかにもな健康食品のケースが5箱も。
置かれた領収書には金30万円の記載。気に留めない花子さんに、良子さんは途方にくれます。
判断能力の低下した高齢者を狙いうちする悪徳商法、オレオレ詐欺は後を絶ちません。
クーリングオフや消費者契約法を用いて、問題を解決する方法もありますが、時機を逃すと解決が難しい場合もあります。
認知症と診断されるなどした場合、後見人等が家庭裁判所により選任され、後見人等が代わって契約をしたり、同意や取消しを行う成年後見制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

障がいのある子の将来が心配

正子さんの子の次郎さんは、とても優しく、自分の身の回りのことはできるし、正子さんのお手伝いもしてくれますが、知的な障がいがあります。
次郎さんは以前悪い知人に騙されてお金を渡していたことがありました。
正子さんは今年80才を迎え、次郎さんは58才です。
今は二人で暮らしているから不自由はありませんが、将来正子さんが病気になって、次郎さんを施設に預けなければいけないこともあるだろし、次郎さんのために貯めておいたお金の管理も心配です。
障がいのある子を長い間見守ってきた親御さんも高齢になります。
自分が亡くなった後、残される子の心配は切実です。親が健在なうちに、子どものために成年後見制度を利用して、財産管理や将来の生活の設計について備えることも必要です。

施設に入っているお年寄りの財産が心配

介護職の山田さんは、施設に入所している田中さんが心配になり、施設長に相談しました。
「田中さんの息子という男性が頻繁にお見舞いにきてくれて、それは有難いのですが、そのたびに田中さんはお金を渡しているようなのです。この前は通帳と印鑑を渡しているところを見ました。でも、入所記録を見ると子どもはいないことになっているのです。心配です。」
身内の方が、本人の財産管理をすることはよくあると思われます。
適切に本人のために管理してくれればいいのですが、勝手に自分のために消費しているケースもあります。

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